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2005.12.23(Fri)
author: 有栖川真理
かつて、《歩み》が大地を踏みしめたことは無かった。それは常に超えゆく歩みであった。
道とは超過してゆく空間である。それは通じているのではなく、越えられてゆく。道は、地図ではなく、ましてや、大地ではない。道が開示するのは彼方である。
道の上をひとは歩むのか? 道のなかを? それとも、道に沿って?
這い水でさえ、その腹を擦りつけはするが、それは擦〔こす〕り、そして立ち止まるためなのではない。這うことによって、そこに間隙が、超薄的間隙が生ずる。表面に貼り着くのは、剥がれるためである。それは滑る、ずれる。そして道から溢れ出る。
道にとって余りにも過剰な歩み。
大地にとって余りにも過剰な道。
歩みは飛ぶ。這うこともまた飛行である。飛行は滑り、空間をつるつると滑ってゆく。
道は歩みとなるとき、存在が生成変化となるdisposition(その海の原理)なのだ。物理的道程を離れ、ホライゾンを超えて、道は道から離陸する。そして飛行し、帰路を急ぐのだ。
やがて道は軌跡となり、航跡となり、煙のように消えてゆく。それはtraceableなものではない。道路には道は残っていない。道は「道路」から溢れ出る。それは水であり、川である。
道は、必ず零れるのだ、別の道に向かって。
一本の道は無い。しかしまた、道は一本しか無い。つまり、一直線の道は無く、多種多様なものを縫ってゆく糸があるだけだ。
かくして道はもはや風となり、天をゆく。地を這いながら。それはなぞりはしない。
2005.12.23(Fri)
author: 有栖川真理

金魚鉢のなかに疑問符が泳ぎ
縞模様に轢かれた人体が馬跳びにはげむ
鈴鳴らす楽の音の転落のあと
耳しいた白い個室にものいわぬ音符が
聞こえない音楽を落書きしている
回る珈琲の渦
白い陶器に白い指をからめ
見つめよ 見つめよ
回る珈琲の渦
コトープ
コトープと
点滴する文字に
茶色い音素の顆粒を
明るい毒素の血球を
意味しない言語の蒸留を
読め 知るな 読め
目にみえる物音を
骨組の下の心音を
聞くな 数えろ 触れ
時が物みなのうわべにじりじりと燃え
いらだつ点滅を見せてくるレンズの下で
焦げ穴をあけるさまざまな照準
回る珈琲の渦
見つめろ 見つめろ
回る珈琲の渦
2005.12.18(Sun)
崩れるひとみがわたしへと振り返る、
彼女のひらいた口もとに
/思い出すことのできない破裂音の
崩れる言葉でわたしを定めようとする。
きみは何を視たのか エンノイアよ
何故、わたしへと脅えるのか、きみは知らない
すがりつく手首に蒼い脈動がはち切れそうに浮かんでいた
打ち寄せる問いで からだをいっぱいにしながら
きみはわたしを掴んだまま 海に墜ちてしまう
もうあのとき きみは亡骸だったのかエンノイアよ 答えておくれ
きみはわたしを見失い
厳冬の海のしわぶきと白いかもめに
きみはわたしを見失い
わたしがきみを喪う刹那に
わたしに何を見定めたのか





