ありえないもののために

Credo, quia impossible est.

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エンノイア

author: 神沢昌宏&有栖川真理



崩れるひとみがわたしへと振り返る、
彼女のひらいた口もとにすためいていたおこ
       /思い出すことのできない破裂音の
崩れる言葉でわたしを定めようとする。

きみは何を視たのか エンノイアよ
何故、わたしへと脅えるのか、きみは知らない
すがりつく手首に蒼い脈動がはち切れそうに浮かんでいた
打ち寄せる問いで からだをいっぱいにしながら
きみはわたしを掴んだまま 海に墜ちてしまう

もうあのとき きみは亡骸だったのか
エンノイアよ 答えておくれ
きみはわたしを見失い
厳冬の海のしわぶきと白いかもめに
形跡あとかたも無く食べられてしまったのか
きみはわたしを見失い
わたしがきみを喪う刹那に
わたしに何を見定めたのか
きみは夜に拡がる エンノイアよ
果てしない闇空をつややかなひとみにして
きみのまなざしが宇宙を呑みこむ
満点の星座から銀の視線がわたしへと降り注ぐ
きみはわたしを眺めている エンノイアよ
わたしはきみの最央さなかにいる 夢見られているのだ
死んだのではなかったのだね エンノイアよ
エンノイアよ 答えておくれ
夜道を何処までもきみを捜し
尋ねて歩くわたしに現われておくれ
きみは彼方で瞼を閉じ わたしの夢を見続けている(のか)

エンノイア、眠りびとよ
きみは〈死〉のように白く仄光るからだを黒いしとねに横臥よこたえていた
わたしがきみから離れ去ったあの夜明け前から
きみは〈死〉を眠りつづけているのか
安らかに眠れ エンノイアよ
わたしはあの夜 きみが喪われることを知った
きみはすでに〈死〉を身にまとっていた 素裸の白肌のうえに 雪のように
わたしの触れ届かない隔たりが
かなしげにわたしを見上げていた
きみはきみのなかにいた、隙間も無く一致して。
わたしは 独りぼっちで目覚め
わたしを拒む眠りの distance から追われ
雪の戸外へと出発しなければならなかった
きみを そこに置き去りにし けれども
いつの日か同じ場処にわたしを迎えるきみと
世界の果てに巡り会うために

エンノイアよ きみの訃報は
半年も遅れ 黄ばんで届いた
冬木立の下 枯葉をくだいてわたしは
まだ(おそらくは同じ道を)歩いていた
けれども わたしは泣かなかった
わたしは知っていた、きみが
死ななければならなかったと。
口癖のように反復くりかえされたきみの命題を信じたわけではない。
エンノイアよ きみが死んで随分してからのこと
マルク・アランの美しく悲壮な詩に
きみと同じ決意をみつけた
  《わたしは死ななければならない/わたしじしんになるために》
それでも、ひとは生きてゆくものだ。
そうではなく、あの明け方、きみは
もう冷たくなったからだだけで〈存在〉した。
きみはきみじしんに連れ戻され、わたしから永遠とわに奪われていた

死は
あのときに決まっていたこと。

わたしはとっくに終わっていたきみの葬儀に連ならなかった
きみの拙い厭世思想を書き連ねた遺書がもしあったのだとしても
わたしは読む気も起こらない
わたしはきみのために泣く者たちがピラニアだと知っているから。
わたしはきみの死を許す。
そうだ、きみは死んだ方がよかったのだ
きみはなんとしても死ななければならなかったのだ
誰にもそれを咎め、裁き、おこがましく嘆く権利などない。
きみの、きみだけの〈死〉を、何故きみが死んだのかを知る権利など
誰にもありはしないのだ。

そのとき
ひとつの大きな星がわたしの胸に落ちてきた
シュッと消える湯気のような光でわたしをいっぱいにして
きみがわたしに届いたのだった
わたしは泣いた 心からの嬉しさできみを迎えて
けれども 抱きしめるわたしの胸のなかで
きみは溶け、瞬く間に形跡あとかたもなかった
わたしは再びきみを(きみの消滅を)失った

エンノイアよ 死んでしまったのは誰なのか
きみか それともむしろ
このわたしこそが死者なのか
きみの広げる白い夜に迷い
わたしは消えそびれた夢のように 亡者のように残留する幻か
エンノイアよ きみの
崩れる瞳がわたしへと振り返る
きみの顔をもう忘れかけているのに
あのまなざしを忘れることが出来ない
何故きみはわたしへと脅え瞠ったのか
エンノイアよ 教えておくれ
あの瞳がわたしを撮ったときから時は停まり
わたしは
きみの広げる夜の黒眸の淵に吸い取られて
きみの永久とわ魘夢えんむのなかにしかもういないのではないのか
そしてきみの死骸が腐ってしまうように
きみの眼の宇宙と共にわたしもまた消え失せつつあるのではないのか
エンノイアよ きみの死を死んでゆくのはわたしなのか
きみに代わってわたしがきみの成就したかった〈死〉を死のうとしているのか
エンノイアよ 教えておくれ
きみの死後もなお続く、この悪夢から わたしは
きみを解放しなければならないのか

エンノイアよ きみの遠くからまだ発信する声が
あのとき
溶ける彗星とともに伝えられた
ああ きみの声が きみの遺言が遅ればせにわたしに届き/響いたとき
わたしの間近に きみの目に視えぬ現存がわたしを撃った

  《わたしが形跡もなく消え失せてしまった次元でわたしをつかまえて》

そして きみの崩れる瞳が 裂ける大気のあちらから
わたしを見ていた きみは
    わたしを捉えて放さず
              (海へと真逆様に墜落しながら・しかし)
高いところからのように
見定めていた、再び
まるで
きみがまだ
そこに立つかのように。

エンノイアよ きみはもう
いないのに
きみの間近さはわたしを去らない
去らない
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Author:NoVALIS666



われわれNoVALIS666は、
三重人格複合体です。

 現実界の男性:神沢昌宏
 非現実の女性:有栖川真理
 超現実の神性:赤ちゃん
    (別名〈赤〉ちゃん

が同居しております。

mari

Autor2:有栖川真理



■特に【有栖川真理】【赤ちゃん】などの但書がない場合、発言者は神沢昌宏という現実の人間です。ほとんど、そういうことになると思いますが、まれに、感極まると人格交代が起こり、たとえば今のように、わたしこと【有栖川真理】が割って入ってくることがあります。また、非常にムカつくと【赤ちゃん】が暴言吐きまくることもあります。同じNoVALIS666でも相当性格違いますので、初めての方、びっくりしないで下さいね。

(文責:有栖川真理



■かかってこい!

(文責なんか知るか!:赤ちゃん


  
■でも、僕はまともな男です。
赤ちゃんみたいに好戦的じゃありません。

(文責:神沢昌宏




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